「苦手」とのやさしい付き合い方。心穏やかな自分時間を見つけるヒント
忙しい毎日の中、ついつい後回しにしてしまう「苦手なこと」
家事や仕事、日々のタスクに追われる中で、どうしても後回しにしてしまうこと、あるいは取り掛かるのが億劫になってしまう「苦手なこと」はありませんか? 例えば、ちょっとした事務手続きや、初めて使うツールの設定、特定の種類の片付けなど、人それぞれに「うーん」と感じるものがあるかもしれません。
そうした苦手なことが、心のどこかに引っかかったままになっていると、「やらなきゃいけないのに」という気持ちが、知らず知らずのうちに心のゆとりを奪ってしまうことがあります。「〜ねば」という思いに縛られてしまうこともあるかもしれません。
効率よくサッと片付けられれば良いけれど、そう簡単にはいかないのが苦手なことのやっかいなところです。つい完璧を目指してしまい、余計にハードルを上げてしまうこともあるかもしれません。
この記事では、そんな苦手なことと、やさしく、そして心地よく付き合っていくためのヒントをご紹介します。苦手なことを完璧にこなすことではなく、心の負担を減らし、忙しい日常の中に穏やかな時間を取り戻すことを目指してみましょう。
なぜ「苦手」と感じてしまうのでしょうか
私たちが何かを「苦手」と感じる背景には、いくつかの理由があるかもしれません。
過去にうまくいかなかった経験があったり、どうすれば良いのか手順が分からなかったり。あるいは、「ちゃんと完璧にやらなければ」という気持ちが強すぎたり、単に「気が進まない」という感情が大きかったりすることもあります。
例えば、新しいスマホアプリを試してみたいけれど、「使い方が難しそう」「設定で失敗したらどうしよう」と感じてしまう場合。これは、ツールの操作自体に慣れていないことや、デジタルへの漠然とした抵抗感、そして「完璧に使いこなさなければ」というプレッシャーが混ざり合っているのかもしれません。
こうした「苦手意識」は、決して悪いものではありません。自分にとって何が心理的なハードルになっているのかを知る第一歩になります。大切なのは、その苦手意識に縛られすぎず、やさしく向き合ってみることです。
「苦手」とやさしく付き合うためのヒント(ツールを使わないアプローチ)
では、具体的にどのように苦手なことと付き合っていけば良いのでしょうか。まずは、特別なツールを使わずに、心の持ち方やちょっとした工夫でできることから考えてみましょう。
1. 「完璧」を手放してみる
苦手なことに対して、「完璧にやらなければ」「一度やると決めたら最後までやり遂げなければ」と考えていませんか? この完璧主義な気持ちが、取り掛かるハードルをぐっと上げてしまっていることがあります。
「今回は、ここまできれば大丈夫」「全部できなくても、これだけはやってみよう」のように、自分で「これくらいでOK」というラインを少し下げてみましょう。完璧を目指すのではなく、「まずは一歩踏み出す」ことを目標にすることで、心が軽くなることがあります。
2. 小さなステップに分けてみる
苦手なこと全体を見ると、とても大きく、手に負えないように感じることがあります。そんな時は、そのタスクをできる限り小さなステップに分解してみてください。
例えば、「書類の整理」が苦手なら、「まず引き出しから出す」「種類ごとに分ける」「不要なものを捨てる」「必要なものをファイルに入れる」といった具合です。一つ一つのステップは小さければ小さいほど良く、「これならすぐできるかも」と思えるレベルにするのがポイントです。
小さなステップを一つクリアするたびに、「よし、できた!」という小さな達成感を感じることができます。この小さな達成感の積み重ねが、苦手なこと全体への抵抗感を和らげてくれることがあります。
3. 「なぜ苦手か」を少し考えてみる
ほんの少しで良いので、「なぜこれを苦手だと感じるのかな?」と考えてみる時間を持ってみるのはいかがでしょうか。
「やり方が分からないから?」「過去に失敗したから?」「面倒だと感じるから?」など、具体的な理由が見えてくると、対処法が見つかることもあります。例えば、やり方が分からないなら、詳しい人に聞いたり、簡単な手順をメモしたりするのも良い方法です。
客観的に自分の気持ちを観察することで、「苦手だから仕方ない」と諦めるのではなく、「こうすればもう少し楽になるかも」という建設的な視点を持つことができるかもしれません。
4. 「誰かに頼る」「ツールに頼る」という選択肢を受け入れる
全てを一人で抱え込む必要はありません。家族に手伝ってもらったり、友人に相談したり、あるいはプロのサービスを利用したり、「誰かに頼る」ことも大切な選択肢です。
また、苦手な部分を補ってくれるツールがあるかもしれません。デジタルツールに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、「この部分だけならツールを使ってみようかな」と考えてみるのはいかがでしょうか。後ほど、ハードルの低いツールの例もご紹介します。
「苦手なことは人に任せる」という考え方も、自分らしい心地よい時間を作るためには有効な手段の一つです。
5. 「やらない」という選択肢も持つ勇気
そもそも、その「苦手なこと」は本当に必要でしょうか? 実は、完璧主義な気持ちから「これはやらなければいけない」と思い込んでいるだけで、実はやらなくても大きな問題がないことかもしれません。
「やらないことリスト」を作るように、今の自分にとって本当に大切ではないこと、あるいは無理してやる必要のないことは、「やらない」と決めてしまう勇気を持つことも、心のゆとりを生む大切な一歩です。
6. 心地よい環境を整えてから取り組む
苦手なことに取り掛かる前に、少しでも気持ちが上向くような環境を整えてみるのはいかがでしょうか。例えば、好きなお茶やコーヒーを用意したり、心地よい音楽をかけたり、短い時間でも良いので心を落ち着ける時間を持ったり。
物理的な環境だけでなく、心の準備も大切です。「よし、15分だけやってみよう」「今日はここまでと決めておこう」のように、時間や範囲を区切ることも、心理的なハードルを下げるのに役立ちます。
7. 終わった後の「小さな楽しみ」を用意する
苦手なことに取り組むモチベーションとして、「終わったら、これができる!」という楽しみを用意しておくのも効果的です。読みたかった本を読む時間、好きなおやつを食べる時間、短い散歩に出かける時間など、頑張った自分へのご褒美を用意することで、前向きな気持ちで取り組むことができるかもしれません。
ツールを使った「苦手」とのやさしい付き合い方
デジタルツールに抵抗がある方もいらっしゃると思いますが、苦手なことの特定のステップだけをサポートしてくれる、ハードルの低いツールもたくさんあります。ここでは、スマホで手軽に試せるものを中心にご紹介します。
シンプルなリマインダー・タスク管理アプリ
複雑な機能がたくさんついているアプリは苦手、という方でも、スマホに標準で入っている「リマインダー」や「メモ」のようなアプリは使いやすいかもしれません。
苦手なタスクを小さなステップに分けたものをリストアップし、それぞれのステップに簡単なリマインダーを設定してみましょう。「午前中に△△の書類を出す」「午後に□□のメールをチェックする」のように、具体的な行動と時間を設定することで、「次に何をすれば良いか分からない」という混乱を防ぎ、一つずつ着実に進めることができます。
「時間になったらスマホが教えてくれるから、忘れずに済みそう」という安心感も得られますし、「完了!」とチェックを入れるたびに、リストが減っていくのを目で見て実感できるため、達成感にも繋がります。
スマートフォンの音声入力機能
文章を打つのが苦手、書類のちょっとした記述やメールの返信が億劫、という方には、スマートフォンの音声入力機能を使ってみるのも良いかもしれません。
スマホのマイクに向かって話すだけで、文章がテキストとして入力されます。もちろん、完璧な文章になるわけではありませんが、たたき台を作るのには十分役立ちます。入力されたテキストを後から少し修正するだけで済むので、一から文章を考えるよりも心理的な負担が少なくなることがあります。
「スマホに話しかけるだけなら、ちょっと試してみようかな」という手軽さが魅力です。
オンラインストレージや写真を使った記録
書類の整理が苦手で、ついつい溜め込んでしまう、という方もいらっしゃるかもしれません。全てをきれいにファイルボックスに収納するのは大変でも、大切な情報だけを写真に撮って、スマートフォンのクラウドストレージ(Google DriveやiCloudなど)に保存しておくのはいかがでしょうか。
例えば、保証書や取扱説明書、役所からの大切なお知らせなど、紙で保管しておくと場所を取ったり、いざという時に見つからなかったりするものも、写真データとして保存しておけば、スマホ一つでどこからでも確認できます。
「物理的な書類整理は苦手だけど、写真に撮るだけなら手軽かも」と感じる方には、こうしたデジタルツールを活用した記録方法が、苦手なことへのハードルを下げることに繋がるかもしれません。
これらのツールは、あくまで苦手なことを「やさしく」サポートしてくれるものとして捉えてください。高機能なものを使いこなす必要はありません。ご自身の負担にならない範囲で、心地よく使える機能だけを利用するのが、長く続けるための秘訣です。
大切なのは、「苦手なこと」をなくすことではない
苦手なことと向き合うことの最終的な目的は、その苦手なことを完璧に克服したり、効率よく片付けられるようになったりすることだけではありません。
それよりも、苦手なことに対する心の負担を減らし、「やらなきゃ」という焦りや、「どうせできない」という諦めから解放されること。そして、そうすることで生まれる心のゆとりや、穏やかな時間を取り戻すことに、本当の価値があるのではないでしょうか。
パートのAさんは、面倒に感じていた週に一度の簡単な帳簿付けを、締め切り直前に慌てて行っていました。完璧に間違いなくやろうとすればするほど時間がかかり、その前後の時間も気が重くなっていたそうです。そこで、「今日はまずレシートを種類別に分けるだけ」「明日は電卓で計算するだけ」と、ステップを分けて取り組み、完璧を目指さず「まずは終わらせる」ことを目標にしてみたそうです。すると、以前ほど憂鬱な気持ちにならずに済むようになり、帳簿付けの後に好きな音楽を聴く時間を設けることで、小さな楽しみもできたと言います。
お子さんのいるBさんは、苦手な来客対応の後片付けをいつも後回しにしてしまい、部屋が片付かないことにストレスを感じていました。「完璧にきれいにするのは無理」だと割り切り、「まずはテーブルの上だけ」「床に落ちているものを拾うだけ」と決めて、短時間でできる範囲だけをやるように変えてみたそうです。すると、部屋全体が完璧でなくても、視界に入る場所がすっきりすることで気持ちが楽になり、その後の自分時間をもっと心地よく過ごせるようになった、と話していました。
このように、苦手なこととの「やさしい付き合い方」を見つけることで、日々の忙しさの中に心地よいリズムや心のゆとりを生み出すことができるのです。
自分にとっての「やさしい付き合い方」を見つける
今回ご紹介したヒントの中に、ピンとくるものはあったでしょうか。全てを一度に試す必要はありません。ご自身が「これならできるかも」と感じるものから、一つだけ、試しに取り入れてみるのはいかがでしょうか。
もしうまくいかなくても、自分を責める必要は全くありません。どんな方法が自分にとって心地よいかは、人それぞれ違うからです。大切なのは、試してみようと思った、その一歩なのです。
苦手なことと上手に、そしてやさしく付き合うことで、きっとあなたらしい穏やかな時間を見つけることができるはずです。忙しい毎日の中で、ほんの少しでも心穏やかな瞬間が増えることを願っています。