「やりたいことリスト」に疲れたら。本当に心地よい「したいこと」の見つけ方
忙しさの中で、「やりたいこと」が見えなくなるとき
家事や仕事、子育てに追われる日々の中で、「自分の時間がない」と感じたり、「何をしたいのか、もう分からない」と感じたりすることはありませんか。
「何か新しいことを始めなきゃ」「もっと時間を有効に使わなきゃ」と思って、書店で時間管理の本を手に取ったり、「やりたいことリスト100」のような記事を読んでみたりするかもしれません。けれども、いざリストを書き出そうとしても、義務感に変わってしまったり、他の人の「やりたいこと」を見て落ち込んだりして、かえって疲れてしまうこともあります。
それはもしかしたら、心地よさよりも「こなすこと」や「生産性」を優先しすぎて、心からの声を聞き逃しているサインかもしれません。この記事では、「やりたいことリスト」に少し疲れてしまったあなたが、義務感ではなく、心から心地よいと感じる「本当にしたいこと」を、ゆったりと見つけるためのヒントをご紹介します。
なぜ、「やりたいことリスト」に疲れてしまうことがあるのでしょうか
「やりたいことリスト」が、本来の目的であるはずの「自分の人生を豊かにする」ことから外れて、負担に感じてしまうのには、いくつか理由があるかもしれません。
- 「やらなければならないこと」との混同: 日々のタスクや義務感から生まれる「やりたいこと」と、心からの喜びや興味から生まれる「したいこと」がごちゃ混ぜになってしまうことがあります。
- 完璧主義: リストを完璧に埋めなければ、すべてを達成しなければ、という気持ちにとらわれてしまいます。
- 他人との比較: SNSなどで他の人の充実した活動を見ると、自分も同じように「やらなければ」と感じ、本来の自分の気持ちが見えなくなってしまいます。
- 結果へのこだわり: 「やりたいこと」を達成した先に得られる結果ばかりに意識が向き、プロセスそのものの心地よさを見落としてしまいます。
このような状態では、「やりたいこと」は心を満たすものではなく、新たな「To Do」リストとして積み重なり、疲弊の原因となってしまうのです。
心地よい「したいこと」を見つけるためのやさしいステップ
では、どうすれば義務感を手放し、本当に心から「したい」と感じることに気づけるようになるのでしょうか。ここでは、生産性や効率から離れて、自分の内側と向き合うためのやさしいステップをご紹介します。
ステップ1:立ち止まり、心と体を休ませる時間を持つ
まずは、「何かを探さなきゃ」「何かを始めなきゃ」という焦りから一度離れてみましょう。忙しい毎日の流れから少し離れ、ぼーっとする時間、何も考えずに体を休ませる時間を持つことが大切です。
例えば、
- 暖かい飲み物を淹れて、ただ窓の外を眺める
- お風呂にゆっくり浸かる
- 心地よい音楽を聴きながら横になる
- 近所を目的なく散歩する
このように、心身の緊張を解きほぐすことで、外からの情報や期待に影響されがちな頭を休ませ、心の奥にある静かな声に耳を傾けやすくなります。
ステップ2:「好き」や「心地よい」という感覚に意識を向ける
「大きなやりたいこと」を探すのではなく、日常生活の中にある「小さな好き」や「心地よいと感じること」に意識を向けてみましょう。特別なことである必要はありません。
例えば、
- 朝の光の中で飲む一杯のコーヒーが美味しいと感じる
- お気に入りのカップを使うと心が和む
- 植物に水をあげている時間が落ち着く
- 特定の香りを嗅ぐとリラックスできる
- 洗い物をする時の水の音が心地よい
- 子どもの寝顔を見ていると温かい気持ちになる
こうした日々のささやかな感覚の中に、あなたの「心地よさ」のヒントが隠されています。大げさに考えず、「あ、これ、嫌いじゃないな」「ちょっと良い気分だな」という程度の感覚を大切にしてみてください。
ステップ3:過去の「心地よかった」瞬間を振り返る
「何をしたいか分からない」と感じる時は、過去の経験の中にヒントがあるかもしれません。これまでの人生で、「時間が経つのを忘れるほど没頭したこと」「心から楽しい、心地よいと感じた時間」「やっていて嫌な気持ちがしなかったこと」などを思い出してみましょう。
ノートに書き出してみたり、誰かに話してみたりするのも良いかもしれません。思い出されるのは、必ずしも大きな成果や成功体験である必要はありません。
例えば、
- 学生時代に図書館で静かに本を読んでいた時間
- 旅行先で偶然見つけた小さなカフェでのひととき
- 友人とただおしゃべりしていた時間
- 一人で手芸や読書に没頭したこと
- 自然の中で過ごした経験
これらの経験は、あなたがどんなことに心地よさや喜びを感じるのかを教えてくれます。そこに共通する要素や感覚が、「本当にしたいこと」へと繋がる糸口になります。
ステップ4:リスト化せず、心に留めておく、または「心地よさノート」に書き出す
「やりたいこと」を見つけたら、すぐにリストにして「よし、やるぞ!」と気負う必要はありません。せっかく見つけた心地よい気持ちが、また義務感に変わってしまう可能性があるからです。
見つけた「心地よいこと」や「小さな好き」は、心の中にそっと留めておくだけでも十分です。もし書き出すのが好きなら、「やりたいことリスト」ではなく、「今日の心地よかったこと」「私の小さな好き集」「いつかやってみたいことメモ」のような、ゆるやかなタイトルのノートに、箇条書きではなく短い文章で、感情も添えて書き出してみるのも良いでしょう。
例:「〇〇の香りのハンドクリームを使うと、ふっと心が和む」「天気の良い日に、窓を開けて掃除をするのは気持ちが良かったな」「古いアルバムを見ていたら、子どもの頃のワクワクした気持ちを思い出した。絵を描くの、好きだったな。」
このような形で書き出すことで、自分自身の内面にある心地よさの感覚をより深く理解できるようになります。
ステップ5:完璧を目指さず、まずは「試してみる」という軽い気持ちで
見つけた「心地よいこと」や「いつかやってみたいこと」を、すぐに完璧にこなそうとしないことも大切です。「まずは少しだけ試してみようかな」という軽い気持ちで始めてみてください。
例えば、
- 「絵を描くのが好きだったかも」と思ったら、いきなり画材を揃えるのではなく、まずは手元にある紙とペンで落書きしてみる
- 「読書に集中したい」と思ったら、まとまった時間を作るのではなく、寝る前に1ページだけ開いてみる
- 「外で体を動かしたい」と思ったら、本格的な運動ではなく、近所の公園まで歩いてみる
このように、小さな一歩から始めることで、ハードルが下がり、無理なく続けることができます。そして、もし「なんか違うな」と感じたら、いつでも立ち止まったり、別のことを試したりして大丈夫です。大切なのは、「やらなければ」ではなく、「やってみたらどうかな?」という好奇心です。
心地よさを羅針盤に、自分らしい時間リズムを
「やりたいことリスト」に疲れてしまうのは、あなたが真面目で、自分の時間を大切にしたいと思っているからかもしれません。けれども、人生は「何をどれだけ達成したか」だけで決まるものではありません。日々の小さな心地よさや、心満たされる瞬間こそが、私たちの毎日を彩り豊かにしてくれます。
義務感や焦りから離れて、あなたの内側にある「好き」や「心地よい」という感覚にそっと耳を澄ませてみてください。それは、生産性とは違う、あなただけの「本当にしたいこと」へのやさしい羅針盤となるはずです。
完璧を目指さなくて大丈夫。他の誰かと比べなくて大丈夫。心地よさを大切にしながら、あなたらしい穏やかな時間リズムを、少しずつ見つけていってください。